適切な量を使用すれば効果があります。
4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(2023 年 1 月)
(日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会)
・歯がはえたら〜2歳まで→1000 ppmFを米粒くらい(1,2ミリ)
・3〜5歳まで→1000 ppmFをグリンピースくらい(5ミリ程度)
・6歳以上→1500 ppmFを2センチくらい
フッ素(フッ化物)の効果について、エビデンスに基づいた情報から考えます。
フッ素の主な効果
1. 再石灰化の促進
• フッ化物は、脱灰されたエナメル質の再石灰化を促進し、歯の耐酸性を向上させる。
• 参考: Ten Cate JM. (1999). “Fluorides in caries prevention and control: Empirical support and mechanisms.” Caries Research, 33(4), 291–297.
2. 脱灰の抑制
• フッ化物は歯の表面にフルオロアパタイトを形成し、酸による脱灰を抑制する。
• 参考: Buzalaf MA et al. (2011). “Mechanisms of action of fluoride for caries control.” Monographs in Oral Science, 22, 97–114.
3. 細菌の代謝抑制
• フッ素は口腔内のミュータンス菌などの代謝を阻害し、酸産生を減少させる。
• 参考: Marsh PD. (1999). “Microbiologic aspects of dental plaque and dental caries.” Dental Clinics of North America, 43(4), 599–614.
4. う蝕予防効果の実証
• フッ化物配合歯磨剤、フッ化物洗口、フッ化物塗布、水道水フロリデーションのいずれも、う蝕の発生率を有意に減少させる。
• 参考: Marinho VC et al. (2003). “Fluoride toothpastes for preventing dental caries in children and adolescents.” Cochrane Database of Systematic Reviews, (1), CD002278.
フッ素の安全性と副作用
1. 適正使用での安全性
• WHOやCDCは、適切な濃度でのフッ化物使用は安全であり、公衆衛生上の利益が大きいと結論付けている。
• 参考: WHO. (2016). “Fluoride and Oral Health.” Technical Report Series 846.
2. フッ素症のリスク
• 幼少期の過剰摂取(特に 0.7 ppm 以上のフッ素濃度の水道水や過剰なフッ化物歯磨剤の誤飲)は、歯のフッ素症を引き起こす可能性がある。
• 参考: Mascarenhas AK. (2000). “Risk factors for dental fluorosis: A review of the recent literature.” Pediatric Dentistry, 22(4), 269–277.
3. 水道水フロリデーションの議論
• フッ素添加水のう蝕予防効果は明らかであるが、一部で過剰摂取による健康リスク(骨フッ素症など)を懸念する意見もある。これは歯学部の公衆衛生など授業でも必ず取り上げられる内容です。
• 参考: Peckham S, Awofeso N. (2014). “Water fluoridation: A critical review of the physiological effects of ingested fluoride as a public health intervention.” The Scientific World Journal, 2014, 293019.
結論
フッ素は適切な濃度で使用すれば、う蝕予防に高い効果を示し、安全性も確立されています。
一方で、過剰摂取によるフッ素症のリスクがあるため、適切な使用が推奨されます。