【小児歯科コラム】子供の下の前歯がくっついている「癒合歯(ゆごうし)」。大人の歯への影響は?
お子様の歯科検診で「癒合歯(ゆごうし)」があると言われたことはありませんか?
当院ではどろんこ保育園の歯科健診を担当させて頂いておりますが、そこそこ見かけることが多いのです。
「歯がくっついているってどういうこと?」「大人の歯(永久歯)はちゃんと生えてくるの?」と心配される保護者の方も多くいらっしゃいます。
実は、乳歯の癒合歯は日本人のお子様には比較的よく見られる特徴です。今回は、特に多い「下の前歯の癒合歯」について、将来的な永久歯への影響や確率、気をつけるべきポイントについてお話しします。
癒合歯(ゆごうし)とは
隣り合う2本の歯が、発育の段階で結合して1本の歯のようになったものを「癒合歯」と呼びます。
欧米人よりも日本人を含むアジア系の人種に多く見られ、乳歯列では全体の約3から5%のお子様に見られます。特に下の前歯(真ん中から数えて1番目と2番目、あるいは2番目と3番目)によく発生します。
一番の心配事「大人の歯はちゃんとあるの?」
癒合歯がある場合、その下で育っているはずの永久歯がもともと作られない「先天欠如(せんてんけつじょ)」という状態になることがあります。
しかし、これは「どの歯とどの歯がくっついているか」によって確率が大きく異なります。
下の歯の「1番目と2番目」がくっついている場合(AB癒合)
これが一番多く見られるパターンです。
過去の日本の研究データによると、このパターンの場合、後継永久歯が欠如する(数が足りない)確率は 約16% です。
つまり、8割以上のお子様は、永久歯がきちんと2本揃っている ということになります。過度に心配する必要はありませんが、生え変わりの時期には注意が必要です。
下の歯の「2番目と3番目」がくっついている場合(BC癒合)
このパターンの場合は注意が必要です。
データによると、永久歯が欠如する確率は 70%以上 と非常に高くなります。将来的に歯の本数が少なくなる可能性を見据えて、長期的な歯並びの管理が必要になることが多いです。
他に気をつけることはありますか?
永久歯の数が揃っていたとしても、いくつか注意点があります。
- 虫歯になりやすいくっついている境目は溝になっていることが多く、汚れが溜まりやすい場所です。シーラント(溝埋め)やフロスを使って予防することが大切です。
- 生え変わりがスムーズにいかない癒合歯は根っこが吸収されにくく、自然に抜けるのが遅れることがあります。その結果、永久歯が変な場所から生えてきたり、なかなか出てこられなかったりすることがあります。
- 永久歯の形や歯並び生えてくる永久歯自体も癒合していたり、サイズが少し小さかったりすることがあります。
研究学園歯科がおすすめする対応
癒合歯自体は病気ではありませんので、すぐに治療が必要なものではありません。しかし、将来を見据えた管理が大切です。
- 4歳から5歳頃にレントゲン確認永久歯の卵(歯胚)が確認できる年齢になったら、一度レントゲン写真を撮って「永久歯の数」や「位置」を確認することをお勧めします。
- 生え変わり時期の定期検診自然に抜けるのを待つか、タイミングを見て抜歯をするか、歯科医師が判断します。適切な時期に処置をすることで、歯並びへの悪影響を最小限に抑えることができます。
「うちの子もそうかも?」と思われたら、次回の検診時にぜひお気軽にご相談ください。お子様のお口の状態に合わせて、最適な時期にチェックさせていただきます。
参考文献・引用データ
本記事のデータは、以下の小児歯科学分野の論文および調査報告に基づいています。
- 米津卓郎, 他. (1997). 乳歯列における癒合歯の実態調査. 小児歯科学雑誌, 35(4), 577-585.
- 日本人の小児における癒合歯の出現率および後継永久歯の先天欠如率に関する代表的な疫学研究です。下顎AB癒合における後継永久歯欠如率(約16.5%)およびBC癒合における欠如率(約73.8%)の数値を参照しています。
- Tsujino K, Yonezu T. (2013). Prevalence of congenital missing permanent teeth in Japanese children with primary fused teeth.Journal of Clinical Pediatric Dentistry, 38(1).
- 乳歯癒合歯を持つ小児における永久歯先天欠如の有病率に関する研究論文です。