ビスフォスフォネート(BP)製剤は、骨吸収を抑制することで骨密度を増加させる薬剤ですが、長期間の使用や侵襲的な歯科治療(抜歯、インプラント手術など)により、顎骨壊死(BRONJ: Bisphosphonate-Related Osteonecrosis of the Jaw)のリスクが高まることが報告されています。
抜歯のためにBP製剤を中止する必要はないというのが最新のガイドラインですが、できれば薬を飲み始める前に歯科を受診し抜歯や歯周病治療を開始するのがベストです。
BP製剤の分類と代表的な薬剤
分類 | 一般名(成分名) | 商品名(国内) | 投与経路 | 備考 |
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経口BP製剤 | アレンドロン酸 | ボナロン、フォサマック | 経口 | 週1回または1日1回服用 |
リセドロン酸 | アクトネル、ベネット | 経口 | 週1回または1日1回服用 | |
ミノドロン酸 | ボノテオ、リカルボン | 経口 | 月1回または1日1回服用 | |
静注BP製剤(高リスク) | イバンドロン酸 | ボンビバ | 静注 | 月1回投与 |
ゾレドロン酸 | リクラスト | 静注 | 年1回投与、最も顎骨壊死のリスクが高い | |
がん治療用BP製剤(非常に高リスク) | パミドロン酸 | アレディア | 静注 | 進行がんの骨転移・多発性骨髄腫の治療 |
ゾレドロン酸 | ゾメタ | 静注 | がん関連の骨病変治療、リスクが特に高い |
リスクが特に高い状況
- 長期使用(3年以上):BP製剤の使用期間が長くなるほどリスクが上昇
- 静注製剤の使用:がんの骨転移治療で使用されるゾレドロン酸(ゾメタ)やパミドロン酸(アレディア)は特にリスクが高い
- 抜歯やインプラント手術:顎骨に外科的侵襲が加わると発症リスクが上昇
- 口腔衛生不良:歯周病があると顎骨壊死のリスクが高まる
- 糖尿病やステロイド併用:全身疾患や免疫抑制状態がリスク因子となる
参考文献・ガイドライン
- 日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2021年版」
- 日本口腔外科学会「ビスフォスフォネート関連顎骨壊死の診療指針」
- 厚生労働省医薬品添付文書(各BP製剤)
⚠注意点
原則として薬を中止する必要はありませんがBP製剤を服用している患者が歯科治療を受ける際は、必ず主治医と相談し、リスク評価を行うことが重要です。
【参考】 顎骨壊死リスクのない薬
SERM:ラロキシフェン(エビスタ)、バゼドキシフェン(ビビアント)
活性型VitaminD製剤:エルデカルシトール(エディロール)
PTH:テリパラチド(フォルテオ、テリボン)、アバロパラチド(オスタバロ)