当院は厚労省の定める【口管強】の施設基準を満たしています

矯正歯科

お子さんのお口の発達、気になったことはありませんか?

診療の中で、保護者の方から「食べこぼしが多い」「発音がはっきりしない」「いつも口が開いている」といったお子さんの様子について相談を受けることが増えています。これらは単なる癖や個性ではなく、口腔機能発達不全症(こうくうきのうはったつふぜんしょう)という状態のサインである場合があります。

口腔機能発達不全症は、近年の診療報酬改定で保険診療の対象となった比較的新しい病名で、おおむね17歳未満の子どもを対象としています。今回は、この病態について、日本歯科医学会が公表している基準に基づき、原因からチェック方法、当院での対応まで詳しくご説明します。

口腔機能発達不全症とは

日本歯科医学会は、口腔機能発達不全症を次のように定義しています。

食べる機能、話す機能、その他の機能が十分に発達していないか、正常に機能が獲得できておらず、明らかな摂食機能障害の原因疾患がない状態で、個人の要因や環境の要因に対して専門的なサポートが必要な状態を指します。

ポイントは、明確な病気があるわけではないという点です。生まれつきの障害や、明らかな病気がないにもかかわらず、口の機能の発達がやや遅れている、あるいは正しい機能の獲得ができていない状態をいいます。機能がまったく働いていないわけではなく、成長のペースが少し緩やかになっている状態とも言えます。だからこそ、早期に気づいて適切に働きかければ、発達の軌道を修正できる可能性が高い状態です。

年齢とともに自然に治まることも多いのですが、生活習慣や癖が背景にあるまま放置すると、歯並びや噛み合わせ、発音、さらには顎の成長そのものに影響が及ぶことがあるため、定期的な観察と早めの対応が重要とされています。

なぜ起こるのか、背景にある習癖

口腔機能発達不全症の背景には、次のようなお口の癖が関わっていることが多いとされています。

・指しゃぶり
・舌を前に出す癖(舌突出癖)
・唇を噛んだり吸ったりする癖(弄唇癖)
・口呼吸
・安静時に口が開いている状態(口唇閉鎖不全、いわゆるお口ポカン)
・舌の位置が低い状態(低位舌)
・頬杖や猫背などの姿勢の癖(態癖)

これらの癖は単独で存在するのではなく、互いに影響し合っています。例えば指しゃぶりが続くと、上の前歯が前方に押し出されて上下の歯が噛み合わなくなる開咬(かいこう)になりやすくなります。その結果、隙間を埋めるために舌を歯の間に挟む癖がつき、唇を閉じにくくなって口呼吸に移行する、というように、一つの癖が次の癖を呼び込む悪循環を作ることがあります。また、アデノイドや口蓋扁桃(こうがいへんとう)などの肥大による鼻呼吸のしづらさが、口呼吸や低位舌の一因になっていることもあります。

こんな様子はありませんか、セルフチェック

日本歯科医学会の指針では、離乳完了後のお子さんについて、次のような項目でチェックを行うこととされています。ご家庭で気になる項目がないか、一度確認してみてください。

食べる機能について
・歯の生え方に遅れがある
・歯並びや噛み合わせに気になるところがある
・噛むことに影響するような虫歯がある
・強く噛みしめることができない
・食事にかかる時間が極端に長い、または短い
・左右どちらかでばかり噛んでいる(偏咀嚼)
・飲み込むときに舌が歯の間から出てくる
・食べる量や回数にムラが大きい

話す機能について
・発音がはっきりしない、音の置き換えや省略がある
・安静にしているときに口が開いている
・指しゃぶりや舌を出す癖など、口の周りの癖がある
・舌の裏のすじ(舌小帯)に異常がある

その他の機能について
・体格が痩せすぎている、または肥満である
・口呼吸をしている
・口蓋扁桃などが大きい
・睡眠時にいびきをかく
・舌を上あごに押しつける力が弱い(低舌圧)

日本歯科医学会の診断基準では、これらのチェック項目のうち2つ以上に該当する場合に、口腔機能発達不全症と診断されます。当てはまる項目が1つだけの場合でも、経過を見ながら観察を続けることが推奨されています。

どのように検査するのか

当院では、問診と視診に加えて、口腔機能を数値として客観的に評価するための検査を行っています。

口唇閉鎖力検査(こうしんへいさりょくけんさ)
専用の測定器を使って唇を閉じる力を測定します。年齢や性別によって標準値が異なるため、成長曲線と同じように、お子さんの年齢に応じた標準値と比較して評価します。標準よりも明らかに低い値を示し、かつ安静時や食事中に口が開いている、口呼吸が見られるといった所見がある場合に、口唇閉鎖力が不足していると判断します。

こうした検査値は一度だけで判断するのではなく、体格の成長曲線のように、継続的に測定して変化を追っていくことが大切です。検査の数値は、トレーニングの効果を確認するモチベーションにもつながります。

治療とトレーニングの進め方

口腔機能発達不全症への対応は、まず生活習慣や食べ方を見直す指導から始まり、必要に応じてお口の周りの筋肉を鍛えるトレーニングを組み合わせていきます。

・咀嚼機能に課題がある場合
食形態の調整や、しっかり噛んで食べる指導を行います。虫歯や歯の生え方の遅れなど歯科的な問題があれば、まずはその治療を進めます。

・唇の閉鎖力が不足している場合
口唇周囲筋のトレーニングを行います。器具を唇と歯の間に挟んで引き出されないように保持する練習や、指で唇の周りをつまんで筋肉を刺激する訓練などがあります。

・舌の力が弱い場合
口腔筋機能療法(MFT)と呼ばれるトレーニングを行います。代表的なものに、舌を上あごに吸いつけたまま口を開閉する練習、舌全体を上あごに吸い上げてポンと音を出すポッピング、ガムを丸めて上あごの正しい位置(スポット)に押しつけるガムトレーニングなどがあります。いずれも毎日継続することが効果につながります。

・発音に課題がある場合
その原因が癖によるものか、舌小帯など形の問題によるものか、あるいは耳鼻科的な問題によるものかを見極めたうえで、必要な訓練や専門機関への紹介を行います。

・口呼吸や扁桃の肥大が疑われる場合
耳鼻科など他科と連携しながら経過を見ていくことになります。

トレーニングの効果を確認するため、開始時とその後は3か月ごとを目安に、お顔や口元の写真を撮影し、変化を記録していくことも大切にしています。

放置するとどうなるか

多くの場合、こうした癖や機能の遅れは成長とともに自然に整っていきますが、問題が長期化すると、歯並びや噛み合わせの乱れ、顎の骨格の発達への影響、発音のしづらさが定着してしまうことがあります。また、幼少期に正常な口腔機能を獲得できないまま成人期を迎えると、将来的なお口の機能低下(オーラルフレイルなど)にもつながりやすくなるという指摘もあります。だからこそ、気になる様子があれば、様子を見すぎずに一度歯科医院で相談していただくことをお勧めしています。

当院でのサポートについて

当院では、定期検診の際にお口の機能についてもあわせて確認し、気になる点があれば口唇閉鎖力検査など客観的な検査を行った上で、お子さん一人ひとりの状態に合わせたトレーニング方法をご提案しています。ご家庭で無理なく継続できるよう、トレーニングの内容や頻度についても丁寧にご説明しますので、気になる様子がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。

まとめ

口腔機能発達不全症は、病気というよりも、口の機能の発達が少し緩やかになっている状態です。食べこぼしや口呼吸、発音の不明瞭さなど、日常のちょっとした様子が発達のサインになっていることがあります。心当たりがある場合は、早めに歯科医院で相談することで、その後の発達を良い方向に導いていくことができます。

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