骨粗しょう症の薬の一つ、BP(ビスホスホネート)製剤と抜歯は相性が良くないといわれており、休薬するべきか?迷う方も多いと思います。昔は休薬していたのですが最近は休薬することは推奨されないという流れに変わってきました。
骨粗しょう症の薬の中で相性が悪いのがBP製剤と呼ばれている系統のもので、すべての骨粗しょう症の薬が相性が悪いわけではありませんので誤解なきようご注意ください!!
- 日本口腔外科学会(JAMS)
2023年の「顎骨壊死関連薬剤(ARONJ)に関するポジションペーパー」では、抜歯時のBP製剤休薬は基本的に推奨されないとされています。特に、経口BPを使用している骨粗鬆症患者では、休薬の明確なメリットは示されていません。
休薬が検討されるケース
- 静注BP(特に悪性腫瘍関連)を使用している場合:休薬の有無に関わらず顎骨壊死(MRONJ)のリスクが高いため、慎重な対応が必要。
- 長期間(4年以上)の経口BP使用者で、加えて糖尿病やステロイド使用などのリスク因子がある場合には、休薬を考慮することもある。
- アメリカ口腔顎顔面外科学会(AAOMS, 2022年第5版)
AAOMSの最新ガイドラインも、日本と同様に骨粗鬆症のための経口BP使用者に対する休薬は推奨していません。ただし、4年以上の使用歴があり、追加のリスク因子(糖尿病、喫煙、免疫抑制状態など)がある場合には、休薬(3ヶ月間のドラッグホリデー)を検討することが提案されています。
- 米国骨代謝学会(ASBMR, 2022年)
ASBMRの見解もAAOMSと同様で、骨粗鬆症治療のためのBP使用者に対して、抜歯時の休薬をルーチンで行うことは推奨されていません。また、休薬による顎骨壊死リスク低減のエビデンスは不十分とされています。
結論
- 経口BP使用者(骨粗鬆症治療)では、通常休薬は不要。
- 静注BP(特に悪性腫瘍関連)の場合は、抜歯のリスクが高く、個別のリスク評価が必要。
- 4年以上の使用+追加リスク因子がある場合には、3ヶ月の休薬を検討することもあるが、エビデンスは限定的。
- 抜歯後の創部管理(抗菌薬の使用、低侵襲手技、長期フォロー)が重要。
推奨される対応
- 低侵襲な抜歯を心がける(骨削除を最小限にするなど)。
- 術前・術後の抗菌薬投与(特に静注BP使用者)。
- 長期的な創部管理とフォローアップ。
つまり、「抜歯時のBP休薬は原則不要。ただし、長期使用者や静注BPのケースでは個別判断」というのが最新のポジションペーパーの共通した見解です。
原則として休薬は不要ですがBP製剤を飲んでいることは抜歯前に歯科医師に必ず申告してください。